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海峡を越えるパンダは民主主義の夢を見るか
台湾総統選は野党・国民党の馬英九前主席の圧勝に終わった。国民党主席だった連戦氏が2005年に訪中しているように、馬氏が中国首脳と会談を持つ機会が 来るかもしれない。陳水扁政権が事実上拒否した中国からのパンダ贈呈受け入れも決まりそうだ。今後、中台対話が進むだろうというのが一般的な見方だ。
そ の一方で、馬氏は選挙前、チベット暴動に絡み北京五輪ボイコットを示唆するなど、今後を楽観視できない要素もある。馬氏が当選を果たしたのは、定着した 「台湾人意識」にうまく乗っかれたから。陳政権の行き過ぎた独立志向には賛同しなくても、台湾住民にとって「台湾人」アイデンティティは自然なものと なった。「独立」でも「統一」でもない「現状維持」を求めるものだが、これは統一志向の中国の政策とは対立する。
中国の「国体」が清朝以来の領土保全であるとすれば、台湾が譲れないものは、2度の政権交代を平和裏に達成した民主主義という制度である。台湾島の代表者 は自分たちで選ぶという原則だ。中国の領土保全に対する強い意志が人権を超越するのは、チベット暴動の弾圧ぶりを見れば明らかで、台湾人の警戒感も高まっ ているだろう。
さらに、背景的な部分では、2009年にも台湾海峡の制空権が中国に移行するとの分析がある。F16売却問題など、米国からの軍事協力が以前よりも低調な台湾に比べ、軍の近代化を急ぐ中国が次第に海峡の軍事バランスを変更しつつある。
そんな中で、パンダ贈呈は明るいニュースではある。 ただ、様々な問題を孕んでいなくもない。
台湾行きを拒否されたジャイアントパンダの団団(トゥアントゥアン・オス)と円円(ユアンユアン・メス)は四川省の臥竜パンダ保護研究センターで 大切に育てられてきた。2頭の名前を合わせると「離れた家族が再開する」という意味の「団円」という単語になる。04年に生まれた2頭は今年夏で満4歳を 迎える。体重は既に100キロを超え、そろそろ繁殖可能になるという。【朝鮮日報・日本語電子版】
馬氏が台北市長時代に述べたように「パンダは共産党員ではない」のは間違いないが、この2頭は「中国人」なのか「台湾人」なのか。ウィキペディアを見て 知ったが、パンダには国籍があるらしい。ほとんどが中国籍で、それ以外のパンダは数頭しかいないそうだ。近年のパンダ外交はレンタルに限られており、レン タル料を取り、いずれは中国に帰国する方式になっている。
今回のパンダ2頭は「贈呈」とされているから、レンタルではないのだろう。中国側の論理から言えば、「国内」にレンタルするのは変な話だ。とはいえ陳政権が拒否した理由として、野生動物の国際取引を規制するワシントン条約に違反していることを挙げた。中国側は「国内の取引」と主張しており、かなり微妙な問題ではある。
贈呈であれば、国籍が相手国のものに変わると思われるが、繁殖して生まれたパンダの権利にも関わってくるはず。ところが、中国は台湾を国と認めていない。例えば、台湾で生まれたパンダを台湾政府が他 国にレンタルできるのかどうか。その辺はあいまいなままやっていくのかもしれない。統治の問題も、あいまいなまま解決しようとする「パンダ・モデル」とで も言える先例につなげていく知恵を絞れないものか。
チベット!チベット!
「チベット!チベット!」
歌姫ビョークが上海のコンサート会場で発したメッセージに呼応したわけではあるまいが、14日に中国チベット自治区ラサで発生した暴動の余波が続いている。The Economistのジェームズ・マイルズ記者がラサからルポを送ったほかは、海外メディアはチベット自治区から閉め出されており、正確な死傷者数を含め「何が起こったのか」を今も明示することは難しい。
青蔵鉄道などの西部大開発によって経済発展の恩恵を与え、独立志向を弱めようとしてきた中国政府の思惑は、そもそも構造的に失敗だったことが露呈した。どのような投資を行ったとしても、結局は漢族の利益にしかならず、チベット族の暮らし向きは決してよくなっていないのである。
中国政府の対応に世界中の注目が集まる中、温家宝首相は「ダライ集団の謀略」などとして、暴動の首謀者をチベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世と決めつけた。だが、The Economistの記事は、対ダライ・ラマをめぐる中国政府の揺れを記している。
Chinese officials have been divided over whether greater contact with the Dalai Lama would help to pacify Tibet. Between 2002 and July last year Chinese officials held six rounds of talks with the Dalai Lama’s representatives. Laurence Brahm, an American author who has tried to mediate, says the discussions reached a high point in 2005 when the Chinese appeared to recognise that the Dalai Lama was crucial to resolving Tibet’s tensions. (The Economist)
北京五輪を前に中国が事態の沈静化を図るには、ダライ・ラマとの接触が必要ではないか。「人民戦争」「文化的虐殺」と激しい言葉の応酬が続いているが、ブラウン英首相と電話会談した温首相は、独立を支持しないことなどを条件に、ダライ・ラマと対話する用意があると語ったという。暴動の波及が止まなければ、チベットへの投資や観光需要が減ることも想定され、チベット族はますます困窮しかねないジレンマもある。
もちろん、中国が国際社会の圧力を受け、チベットの独立や高度の自治を安易に認めるということは考えにくい。台湾を含めた「領土保全」は、行動原理の最上位に位置しているからだ。
チベット弾圧は許されないし、今回の事態では国際機関の調査を求めたいと思う。だが、胡錦濤政権を過度に追い込めれば、軍部や上海閥の台頭を許すだけの 結果になる。率直にいって彼らには複雑化しグローバル化する中国を統治する能力などないのだから、壮大な惨事を引き起こしかねない。日本国としては、穏便 に北京政府を支援していくのは妥当だろうと思う。(極東ブログ)
極東ブログは、中国全人代の開催時期と暴動の発生が重なったことに注目し、中南海の権力闘争との関係を慎重に検討する。そうした議論には与しないし、胡錦濤政権が傾くと上海閥や軍部が台頭するのかどうかは不明だが、中国政府が震撼するような事態が続けば、「チャイナ・リスク」が高まるのは間違いない。米国防総省の老軍師アンドリュー・マーシャル氏は、中国の脅威とは、軍事大国化の脅威ではなく、中国不安定化の脅威だと指摘する。
一市民として、チベットの人権状況の改善を訴えることはできても、国家として日本ができることは、「死傷者が拡大しないようにあらゆる関係者に自制を促したい」(高村外相)などと主張するのに止まるだろう。歯がゆさが残る。