3月 20th, 2008のアーカイブ
チベット!チベット!
「チベット!チベット!」
歌姫ビョークが上海のコンサート会場で発したメッセージに呼応したわけではあるまいが、14日に中国チベット自治区ラサで発生した暴動の余波が続いている。The Economistのジェームズ・マイルズ記者がラサからルポを送ったほかは、海外メディアはチベット自治区から閉め出されており、正確な死傷者数を含め「何が起こったのか」を今も明示することは難しい。
青蔵鉄道などの西部大開発によって経済発展の恩恵を与え、独立志向を弱めようとしてきた中国政府の思惑は、そもそも構造的に失敗だったことが露呈した。どのような投資を行ったとしても、結局は漢族の利益にしかならず、チベット族の暮らし向きは決してよくなっていないのである。
中国政府の対応に世界中の注目が集まる中、温家宝首相は「ダライ集団の謀略」などとして、暴動の首謀者をチベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世と決めつけた。だが、The Economistの記事は、対ダライ・ラマをめぐる中国政府の揺れを記している。
Chinese officials have been divided over whether greater contact with the Dalai Lama would help to pacify Tibet. Between 2002 and July last year Chinese officials held six rounds of talks with the Dalai Lama’s representatives. Laurence Brahm, an American author who has tried to mediate, says the discussions reached a high point in 2005 when the Chinese appeared to recognise that the Dalai Lama was crucial to resolving Tibet’s tensions. (The Economist)
北京五輪を前に中国が事態の沈静化を図るには、ダライ・ラマとの接触が必要ではないか。「人民戦争」「文化的虐殺」と激しい言葉の応酬が続いているが、ブラウン英首相と電話会談した温首相は、独立を支持しないことなどを条件に、ダライ・ラマと対話する用意があると語ったという。暴動の波及が止まなければ、チベットへの投資や観光需要が減ることも想定され、チベット族はますます困窮しかねないジレンマもある。
もちろん、中国が国際社会の圧力を受け、チベットの独立や高度の自治を安易に認めるということは考えにくい。台湾を含めた「領土保全」は、行動原理の最上位に位置しているからだ。
チベット弾圧は許されないし、今回の事態では国際機関の調査を求めたいと思う。だが、胡錦濤政権を過度に追い込めれば、軍部や上海閥の台頭を許すだけの 結果になる。率直にいって彼らには複雑化しグローバル化する中国を統治する能力などないのだから、壮大な惨事を引き起こしかねない。日本国としては、穏便 に北京政府を支援していくのは妥当だろうと思う。(極東ブログ)
極東ブログは、中国全人代の開催時期と暴動の発生が重なったことに注目し、中南海の権力闘争との関係を慎重に検討する。そうした議論には与しないし、胡錦濤政権が傾くと上海閥や軍部が台頭するのかどうかは不明だが、中国政府が震撼するような事態が続けば、「チャイナ・リスク」が高まるのは間違いない。米国防総省の老軍師アンドリュー・マーシャル氏は、中国の脅威とは、軍事大国化の脅威ではなく、中国不安定化の脅威だと指摘する。
一市民として、チベットの人権状況の改善を訴えることはできても、国家として日本ができることは、「死傷者が拡大しないようにあらゆる関係者に自制を促したい」(高村外相)などと主張するのに止まるだろう。歯がゆさが残る。